2018-09-12
給与の話1
給与の話1 -給与とは-

石井です。ご無沙汰しています。久しぶりのHP更新ですが、皆様おかわりないでしょうか。

最近、起業されたばかりの方と給与についてお話しすることが何度かありました。
正社員であれアルバイトであれ、一度は給与を得た経験がある方がほとんどなのですが、給与を払う側と払われる側では随分違います。専門にしている私共からすると当たり前のことも疑問に思われることが多いようです。
HPの定期更新を目標とする私ですので、しばらく給与の話を実務に偏重して税法・労働法・会計・もろもろからお話していこうと思います。初心者以外の方も復習のつもりでご覧ください。

予定は以下の通りです。
1回目 給与とは
2回目 設立の届出 税務署
3回目 設立の届出 労基署とハローワーク
4回目 設立の届出 年金機構①
5回目 設立の届出 年金機構②
6回目 青色専従者届
7回目~ 給与計算
11回目~ 経理処理
12回目~ 年間業務
7回目以降の詳細はそれぞれの開始の時に改めてお知らせいたします。

なお、法律や施行令は頻繁に変わりますが、原則的に2018年9月現在の法令や税率・料率でご説明していきますので、その旨、よろしくお願いします。


そもそも給与とはなんでしょうか?
給料・賞与・俸給・賃金・役員報酬・アルバイト代、寸志。餅代、氷代などといった言葉もありますが、いくつご存知でしょうか。各種手当、通勤交通費というのもありますね。
毎月支給の給料と夏冬に支給の賞与で『給与』と、大くくりで認識されている方が多いかと思います。

所得税法では給与所得を『俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する所得』と規定しています。そして非課税所得も規定していて、『給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当(これに類するものを含む。)のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの』が、最もポピュラーな非課税所得である通勤交通費です。

労働基準法では賃金を『賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの』としています。

これが社会保険(健康保険と厚生年金)となると、報酬とは『賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう』となってきます。

法律によって表現や内容が違います。
労働の対価というのは共通していて、どの法律も「名称によらず」と謳っていながら、そもそもの対象を給与・賃金・報酬と別の呼び方をしています。

最近はどちらの役所も親切なので、違う呼び方で話してもそのまま聞いてもらえますが、昔はいちいち言い直される方もいらっしゃったほどでした。法律が変わったわけではないので、記入例等はいまだに法律文言で書かれているものが多いようです。
ここでは、混乱を避けるため、呼び方を給料・賞与もしくは給与で統一します。
また、条文はともかく、なるべく法律用語は避け日常語でご説明していこうと思います。


時々次のようなお尋ねがあります。「ボーナスを『志』と書いて渡したら税金がかからないのでは? ちょっとの金額なのに税金がかかったらかわいそう」
封筒に書かれた名称が何であれ、それが賞与である以上は課税対象です。もし、源泉徴収されずに支給されたとしても年末調整で精算しなくてはいけません。
逆に『志』と書かれた封筒でも、内容次第では非課税所得になる場合もあります。例えば災害の見舞金は、金額が社会通念上相当と認められれば課税されません。

また、「電車通勤している人には定期代ではなく、定期券を渡しています。給与計算には関係ないですよね?」という質問に対しては、
一般的に電車通勤の定期券は前述の非課税所得に合致するので、所得税の源泉徴収対象ではありません。ただし、社会保険や雇用保険では労働の対償なので、現金でなく現物だとしても保険料を計算しなくてはいけません、という回答になります。

労働の対価である以上は、現金・現物によらず、原則的に給料や賞与であり、税金や保険料の対象になるとお考えください。対象から除外される場合もありますが、交通費が代表するように法律ごとに扱いが違います。

この法律ごとに違う取り扱いが、給与計算をする時に頭を悩ませることになってきます。
現在では給与ソフトもお手頃な物が多く、特にタイムカードと連動している場合は、コンピューターが勝手に計算してくれたと思われる方が多いのですが、コンピューターは計算をしてくれるだけで設定は人力です。わかった上で設定を行わないと、後から訂正に次ぐ訂正ということになってくるかもしれません。

これからしばらくお付き合いいただく「給与の話」は、基本を押さえるため、手書きで給与明細が作成できるようにご説明をしていこうと思います。

次回に続きます。