2020-07-16
入院時の返戻について
ご無沙汰しております。石井です。
コロナ禍で手を取られ給与の話がストップしています。今年は年末調整が大幅に変更されるのでできれば再開したいところですが目途が立っておりません。
今回はいったん別のことを取り上げます。


「お産以来、数十年ぶりに手術をするのに入院したの。返ってくるよね?」

相手は伯母でしたので「何が?」と聞いたところ、「テレビでやってるあれ」「どの番組?」とコントのようなやり取りでした。
伯母は医療費控除のことを尋ねていたのですが、医療費控除や高額療養費については、頻繁にご質問がありますのでいわゆる「入院で戻ってくるお金」をお話ししようと思います。


一般的に手術や入院をした場合、受け取れる可能性のあるものは以下の通りです。

1.各種保険(共済)による給付補てん金
2.高額療養費による医療費
3.医療費控除による税金還付

これらの他に、会社を休んだ時の「傷病手当金」「休業(補償)給付」「出産手当金」や出産のときの「出産育児一時金」等もありますが、ここでは一般的な上記についてご説明します。

まずは、各種保険による給付補てん金から。
これは保険会社等と契約を結んでいる場合に給付され、「入院給付金」とか「手術給付金」と呼ばれるものです。
給付内容は契約によって異なります。事故の場合のみ給付とか。がん保険は各社いろいろなプランがありますね。
額の小さい共済なので、給付があることを失念していたということも多々あるようです。
何かの機会に、保険契約を整理されて、どのような場合にいくら払われるかを把握されることをお勧めします。その金額が適切かどうかは重要なポイントです。
複数の保険会社で契約している場合、必要数の診断書をとらなくてもコピーを使いまわせる場合も多いので、事前に確認しておきましょう。
なおこの給付金と医療費控除は、申請(申告)をしないともらえませんのでご注意を。

また一般的に給付金類は、非課税です。
例えば入院費用30万円に対し給付金35万円で、給付金の方が多い場合でも非課税であることにかわりはありません。ただし後からお話しする医療費控除で医療費からマイナスする必要があります。
なお、〇〇保険金というものは課税される場合が多いので、給付金という名の「保険金」の場合は課税かもしれません。詳細は保険会社に確認なさってください。

次は高額療養費です。
医療機関等に支払う医療費は、保険対象となって窓口で3割負担等になっている場合がほとんどです。この窓口で支払う自己負担額が高額になった場合は、一定額以上が払い戻されます。
もともとはいったん窓口で支払い、後日払い戻しを受けるのが原則でしたが、今は窓口での支払い時に調整することが主流です。
保険証の一番下に書かれているところ(保険者)に、限度額適用認定証(最長1年有効)を発行してもらい、医療機関に提示します。入院のしおりに書かれている場合もありますね。
保険者によっては申請しなくても自動的に払い戻される場合もあります。

実際に高額療養費でいくらが戻ってくるかですが、自己負担額の上限額が所得等によって変わってくる上に、高額療養費の対象にならない医療費(差額ベッド等)もあります。詳細については触れませんので、保険者に問い合わせるかHPなどをご覧になってください。
この高額療養費も非課税であり、医療費控除の場合にはマイナスするものです。

さて最後の医療費控除です。医療費控除とは1年間に支払った
医療費等から、
10万円もしくは総所得の5%のいずれか低い額を引いた金額の、
税率分が還付される仕組みです。

まず、医療費等から。
いわゆるお医者さんへの支払い以外に、薬局で払った分、通院等にかかった交通費等が該当します。ただ、すべてが医療費控除の対象になるわけではありません。大人の歯列矯正は、矯正目的によって判断がわかれるのが有名ですが、「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」が該当しますので、個別の判断が必要です。必要と認められれば高額療養費では対象外だった差額ベッドも医療費控除の対象となります。

繰り返しになりますが、受け取った高額療養費や給付金については、医療費の支払額から差し引いてください。
限度額適用認定証をお使いの場合は支払った額をもとに計算すればよいのですが、後日払い戻される場合は、請求の度合いによって返戻が遅れる場合も多々あります。支払いに対応する高額療養費を差し引く必要があるので、11月や12月の医療費についてはご注意を。

給付金について、支払い30万円に対し35万円の給付の場合も非課税とご説明しました。この関係ですが、医療費控除については支払額を上限に給付金を差し引く必要があります。
交通事故の手術に30万円(A)支払い、これに対する給付金35万円(B)。別途持病の治療に12万円(C)支払った場合、A-B+C=7万円と計算するのではなく、A-A+C=の12万円と計算します。

次に、10万円もしくは総所得の5%のいずれか低い額。
これについては免責みたいなものという言葉がわかりやすいかもしれません。医療費が一定額以上でないと対象にならないわけです。
10万円>総所得の5% の数式を成立させるには総所得が200万円未満でないといけません。
これを【所得】でなく【収入】に変換してみます。所得は10種類に分かれるので年金で計算してみしょう。65歳以上で年金収入しかない場合、年間額面320万円未満が該当します。

最後に「税率分が還付される」の部分です。
税金の計算を簡単に説明すると、
(各所得の合計 - 各控除の合計) × 税率 = 税金 となります。
医療費控除で、「各控除の合計」に上乗せを行うことによって税金が低くなり、差額が還付される仕組みです。ただし還付されるのは税金が徴収されている場合です。事業主の納税額を低くする形もあれば、そもそも所得が高くなく課税の対象ではないので効果が出ない場合もあります。

結びとして、冒頭の伯母の話です。
高額療養費はまだだったようで申請をすすめ、保険証券も確認すするように伝えました。
医療費控除については、伯母夫妻は年金生活で国税・地方税共に非課税とのことでしたので難しいかもと伝えましたが、ちょっとここで問題が。
高額療養費や給付金はその時期のみで完結するのでわかりやすのですが、医療費控除は1年間で判断します。前年が非課税でも今年もそうだとは限りません。保険者から送られてくる医療費の通知も領収証と同額ではありません。ということで、
「とりあえず全部残しておいて、年がかわってからもう一度尋ねて」